シンポジウムにおける地方新聞のデジタル化に関するご質問について

11月28日に開催しました第7回シンポジウム「図書館とコミュニティアセット」にご参加いただいた皆さま,誠にありがとうございました。
時間内にお答えできなかったご質問「昭和以前の情報源として地方新聞のデジタル化が有効だと思うのですが,個人情報や著作権などハードルがいくつもあります。上手い解決法がないものでしょうか?」につきまして,下記のとおり回答・コメントさせていただきます。ご参考になれば幸いです。


(質問)昭和以前の情報源として地方新聞のデジタル化が有効だと思うのですが,個人情報や著作権などハードルがいくつもあります。上手い解決法がないものでしょうか?

《課題整理》
(1)入手困難で貴重な地域資料等については,「図書館資料の保存のための複製」であれば,著作権法に基づき著作権保護期間内でも許諾なしでデジタル化が可能(参考:「美術の著作物の原本のような代替性のない貴重な所蔵資料や絶版等の理由により一般に入手することが困難な貴重な所蔵資料について、損傷等が始まる前の良好な状態で後世に当該資料の記録を継承するために複製することは,〔著作権〕法第31条第1項第2号により認められると解することが妥当」(https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/bunkakai/41/pdf/shiryo_3.pdf))。なお、新聞社として,著作権や個人情報等に配慮の上,電子版を提供している可能性があるため,状況確認が必要(あれば購入を検討)
(2)Web公開には,著作権処理(著作権者等の確認,デジタル化のための複製権,Web公開のための公衆送信権,必要に応じてデータの二次利用についての許諾など)や個人情報等への配慮(マスキングや伏字など)が必要

《考えられる対応》
・段階を踏んで検討・対応してはどうか(例:入手困難な貴重な資料であれば失わないようまずは保存のためのデジタル化を進めておく,著作権保護期間を過ぎたものから公開を進める,見出しなどに絞りテキストデータをWeb公開,公開のための伏字・マスキング等の判断,運用の中で随時見直し柔軟に対応,など)
・著作権処理:まずは,新聞社が公開している権利者等の情報の状況確認,新聞社に相談(デジタル化しデータを保存・提供していくために,著作権者への確認時に包括的な権利処理ができるとよい)
・デジタル資料と肖像権に関わる対応:デジタルアーカイブ学会『肖像権ガイドライン』(https://digitalarchivejapan.org/bukai/legal/shozoken-guideline/
)を参考にしている事例がある
・必要経費の確保:組織内だけでの予算獲得が難しい場合は,助成金等を活用

《シンポジウム講演者・パネリストの後藤真先生(国立歴史民俗博物館 准教授)からのコメント》
おっしゃる通り,地方新聞は地域の情報の宝だと思います。
電子化のコストという面では難しい部分もありますが,まずは職務著作物としての著作権が切れている1967年以前のものを対象にして考え,そこから利用価値の高さを認めてもらうことで,展開するというのもありうるかもしれません。
新聞社さんとの確認は必要ですが,古いものほどクリアしやすくはなりますので,古いものから順に進めることで,やりやすさは少しだけ生じるのではないでしょうか。

なお,ご存知かもしれませんが,神奈川新聞さんは古い写真のアーカイブを公開したりしています。このような流れを応援することも重要かと思います。
https://kanagawashimbun-archives.jp/